世の中にはあらゆる不幸、不満、不公平が充満している。
それはたった1人が感じているものであったり、多くの人が同じようなことを抱いていたりもする。
そして、その人達にとっては深刻である。
それらの不幸、不満、不公平は抽象化することができる。
有史以来初めて訪れたかのような現象はそうあるものではないからである。
以前もこういうことがあった、と言う人がいる。額面どおりならそう言っているだけであるが、単に思い出しただけなのかもしれないが、その深層心理としては「またか」とか「2回目だな」だと思われる。いい加減にしろ、のほうであれば思い出してくれてありがたいところであろうが、「(前にもあったから)問題ない」という使い方をすることもできる。
抽象化すると、ほぼ確実にあらゆる不幸、不満、不公平は以前にもあった何かだからだ。それを乗り越えて今があるのだから大丈夫、という言い分なのかもしれない。
しかし当事者にとってはその抽象化は必ずしもありがたくない。
前にあったことと今あったことは、抽象化したから同じに見えているだけで、特化すれば当然ひとつひとつの事情は異なる。
以前の一見似たような出来事がどのような顛末を辿っていようと、今ふりかかかる不幸、不満、不公平は目減りしないであろう。「だから問題ない」などとはもってのほかである。